絵とお金の交換について考える。

              

https://twitter.com/TukasaFuzaki/status/965200593823285249

 

こんなツイートがありました。大いに興味をそそられます。

絵を描くのは好きですが、お金の話はもっと好きです。

 

さて、今回は完全に「描く側」としてのお話です。

この方は「絵描きの人はおおよその依頼料を示してほしい!」とお考えのようです。

なるほど。

 

ぼくは個人的に、作品そのものには価値がないと思っていて、「見た人が感動したという事実」であったり、「広告媒体に使うことで売り上げが上がることが見込めるという信頼」にこそ価値があると思っています。

 

少し深く考えてみましょう。 

 

商業イラストレーションの場合

 

一般的に「商業イラスト」はどのように値段が決まるかというと、「それを使用することで、どれだけの広告効果が期待できるのか?」ということで決まります。

 

たとえばこんな企業案件。

  • Aという清涼飲料の広告に使うイラストを描いて欲しい。なおこのイラストは、ポスター、CM、web広告、電車の中吊り、自販機など、あらゆる場所での使用を想定している。

 

この場合、ギャラはけっこう高くなると思います。

 

「イラスト」とは、本来は「広告のために使用される絵」のことをいいます。

そして広告とは、売り上げを伸ばすために作られるものです。

本の表紙も本の売り上げを伸ばすために描かれますし、CDのジャケットでも同じことです。ないよりはある方が売り上げが上がるもの。それがイラストです。

 

では先ほどのA案件の場合どうなるかというと、広告として使用する媒体がすごく多いですよね。たぶん街中でこのイラストを見かけることになるでしょう。

ということは、「その広告によって上がるであろう売り上げ」の見込み金額が高いということになります。

 

ちなみにもしこんな案件が来た場合、イラストレーターはその分緊張します。笑

これはへたなもん描けねーわと。

「なお、この模様は衛星放送で世界中に放送されます」といわれた状態で壇上に上がるようなものだと思ってください笑

 

となると、その分イラスト自体の単価も高くなってしかるべきだと思います。

お金とは信頼です。あなたならこのギャラに見合う集客が見込めるイラストを描いてくれると信じています、ということが金額に示されるわけです。

 

 

SNS等における個人間のやり取りの場合

 

では、こういう「商業的なやりとりでない場合」はどうでしょう。

ツイッターなどの場所で、俗に「絵師」と呼ばれる人が依頼されるとしたら。

 

先ほども述べたように、まずは「何に使うのか」ということを考えるべきでしょう。

 

多分、このツイートでもいわれているような「アイコンやヘッダーを描いて欲しい!」という依頼が多いと思います。

この場合はどうなのでしょう。

 

ぼくは「どんな目的で運用しているアカウントなのか?」という点が重要だと思います。

 

例えば、「個人的にかわいい女の子のアイコンを使いたい!」という場合であれば、値段は「お気持ちで」というスタンスで決めていいと思います。こういう曖昧な場合の話は後述します。

しかし、何かの公式アカウントや、ネット内で影響力があると得をするような活動をしている人団体の広報用のアカウントなどの場合、はなしは違います。

 

  • ユーチューバーBがツイッターやチャンネルで使うアイコン、ヘッダーを描いて欲しい。

この場合、「収益効果を見込んだ価格設定」が必要だと思います。

 

ユーチューバーであば、自分のコンテンツが拡散される、フォロワーや登録者が増えるということが、自らの利益の増減に直結します。

登録者数などに関係なく、「イラストによってファンを増やしたい」のであればそれなりに多めに払う方がいいでしょう。

 

余談ですが、「有名な人、ファンが多い人」に仕事を依頼する場合は、その分多めに払う方がいいと思います。

「作者名が書いてなくても絵柄で作者がわかる」というバケモノ重鎮が、メジャー界隈だったり同人界隈だったりにいると思います。

 

例えば世の中には「あっ、中村佑介のイラストだ!」と、「中村作品が使われているだけで手に取ってしまう人」がいます。(ぼくのことです)

こういうぼくみたいなファンが、たくさんいればいるほど「その人が起用されるだけで売り上げが上がる」という効果が期待できますので、こういう人のギャラはえげつなく高いでしょう。バケモノ………

 

(有名になるまでがんばったんですもんね……)という気持ちで、有名な人にはたくさん払いましょうね。有名さにあやかろうとしているわけですから。

キャラクター商品のキャラクター使用料が高いのと同じです。

 

 

イラストは広告効果に値段がつく。アートは?

 

以上のことから、イラストというのは「自分が得する手伝いをしてください」という動機で依頼されるものだということがお分りいただけたかと思います。

 

儲けたくて、そのための投資の一部としてイラストレーターにギャラを支払うというのであれば、どのくらい得させてもらえるかで値段は決めるべきだと思います。

 

でもこんな風に「金額」でどのくらい得できるかを数値化できるのであれば、ギャラはある程度簡単に決められます。

しかし、数値化できない場合というのが非常に困りもので、困りものだからこそ相場ねーのかよという気持ちになるのも納得できます。

 

数値化できない場合というのは、「別に儲けたいわけではない」という場合。

 

たとえば「この部屋の壁がさびしいから何か描いてくれたまえ」という……そんな依頼が今の時代にあるかなんて知りませんが……そんな依頼があったとしましょう。

 

この場合、単に「美しくしたい」という動機しかありません。

これほど曖昧なものはないでしょう。お金で換算できない。あーめんどくさい笑

 

作品が手に入るということ以外に依頼する側にメリットがない依頼に対して描かれる作品は、もはや「イラスト」ではなくて「アート」です。解釈というより、それぞれの定義上そう判断するのが正しい。

 

アートの話はあまりにしづらいので、「家庭内のお手伝い」で例えてみます。

 

  • お父さん「冬用タイヤに変える手伝いをしてくれ。お小遣い1000円あげるから

 

引き受けるでしょうか。

 

「家族だもん!別に小遣いがなくても引き受ける。でももらえるならうれしい」

「やりたくないけど、この前迷惑かけたしな……」

「中学生には1000円は大金。やるやる!」

「俺はもう高校生。1000円とかなめてんのか」

「お父さんもう歳だし、私が全部やるよ」

 

このように、価値観や年齢、立場によって、いくらでも受け取り方は変わると思います。

 

アートも結構こういうところがあると思っているので、「先に金額示せ!」というお気持ちになるのも痛いほど分ります

 

お金で換算できない価値に値段をつける以上、完全にただのさじ加減になりますので、どう感じるかは人それぞれということになりますよね。

相場なんて統計データで結果論的にしか出せないし、商業性がない以上誰もが納得する「価値」なんて算出しようがありません。

 

アートにおける価値は、完全に「主観」しかないと思っています。

「感動しました!100万円の価値があると思う!」といって100万円で作品を買ったとしたら、「その人の中では」それだけの価値があったわけです。しかしそれは、他人には理解できないし、理解を強いるべきでもないはずです。

 

そういう意味で、アートって本質的に恋愛っぽい。

「安い!なめてんのか!」っていう作者側のクレームは、「サイゼリヤで済まされるなんていやだな」っていう気持ちと一緒なんですよね。

 

 

結論:絵とお金について、どう考えた方がいいのか

 

以上から、個人的にぼくが思う双方に必要な姿勢についてお話ししようと思います。

 

まず、依頼される側。

クリエイターの人は、「相手の目的を確認」しましょう。

先に予算を確認するのも大事ですが、「相手はこの依頼でどれだけ得ができるのか」というところを見極めるということも必要なのではないかと思います。

 

また商業性が乏しく、主観でしか価値がつけられないなら、「このくらいは払うべきだろう」という傲慢は捨てましょう。

「スキルやこれまでの努力にお金を払え」という人もいるけど、個人的には「好きで個人的にやってることなんて、どれだけがんばってようと知らんよ」という気持ちです。

 

労力に対してお金をもらおうなんて考えずに、相手にどれだけのメリットを与えられるかで金額は提示したほうがいいと思います。

 

そして、依頼する側。

誰かに依頼する際は、「自分が得られるもの」を考えましょう。

仕事をしてもらうことによってメリットがあるなら、安易に買い叩かない。

安い買い物しようと思わないほうがいいです。誰のためにもならない。

 

あと、「こんなにがんばったんだからこのくらいよこせ」という要望には、ほんとにケースバイケースで応じましょう。

例として、「手塚先生の原稿が間に合わないからみんなで今晩中に描いて!→完成→なんか間に合ったわ。それいらん」というような場合(実話)は、さすがにギャラは払ってあげたほうがいいと思います。今後の関係のためを考えて。

 

 

アートにおける価値というのは恋愛感情みたいなもんなので、値段は作者や買う側の主観でしかないです。合わなきゃそれまでです。

そう思ってるので、「絵を描いただけで」金を払ってもらおうというのはお門違いだと考えています。

 

イラストの場合でも、「広告としての効果」が重要な指標です。

イラストレーターは「どのような色・モチーフ・構図で描けば、より消費者へ訴えかけられるだろう?」という設計者(デザイナー)のような気持ちで描くべきなのです。

 

好きに描きたい、お金も欲しい」というアート志向の人は、どうか溺愛してくれる「運命の人」を探してください。赤い糸はありますよ。たぶん。

 

 

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