エピソードの外へ

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文章を書くのが好きなんです。

 

現在のぼくは、イラストレーターと自称するただのヤングビンボー杉並区民だけど、絵を描く以外にも好きなことはまあまああって、これもその一つ。

 

絵を描くのは昔から一番得意だったし、専門学校で基礎を一通り勉強してしまったし、続けてれば何かいいことはありそうな気がする。
でも肩に力を入れざるを得ないのでただ楽しいかというとそうでもない。
そこへいくと文章を書くのは、小学校の作文や高校の現代文くらいしか勉強してないけど、だからこそなのか、もはや快楽といって過言でないような楽しさを覚えるのであります。

 

ぼくは常に考え事をしてしまう癖があって、それが高じて長いこと妄想癖も患っているけれど、困ったことに歩いているときは大体、気づくと頭のなかで文章をしたためてしまう。

それなりにおもしろい考え事だったはずなんだけど、書く速さより考える速さの方が速いからメモもとくにせず、どこかしら結論めいた場所へたどり着いたような気がしたら、満足してさっと忘れてしまう。

 

なんかもったいない。

 

有意義な社会論や哲学のような、何かぼくを大きく背伸びさせてくれるものの発端やヒントは、だいたい日常に隠れている。
絵のモチーフもおもしろいものはだいたい日常のどこかにあるし。

ぼくがどんなことをしたり、どんなところに行ったりしたのか。
そこから哲学も、誰もが持っていて、感じているだろう何かも、じっと見ていれば見えてくるのではないか。

 

そういうことを考えたぼくは、ノートに日記をつけ始めた。


シェアハウスを抜けて一人暮らしを始めてはや2ヶ月。
職場で積極的に友だちを作ろうというタイプでもないので、一人で黙々としている時間が増えた。おかげではじめて日記が1ヶ月も続けられたのだ。

 

日記に書いたことも書いてないことも、書き始める以前のことなども思い出したら思い出してみて、じっくりとそれらを「観察」して、何かおもしろがれるような要素を探して論ってみようではないか。

それらエピソードの数々を、当事者だった視点から、やや外側から眺めてみよう。

それがこの「エピソードの外へ」というタイトルに込めた、思い、もといこじつけである。

 

ほんとのところは、ふつーに星野源がすき。

だいすき。

曲もそうだし、エッセイも輪をかけてすき。

エッセイというジャンルがもともと好きだったんだけど、星野源の「そして生活はつづく」と「蘇る変態」が、いままでで一番好きなエッセイといっていい。
ポケットにはiPhoneより「そして生活はつづく」の文庫を入れていきたい。

 

で、当然ぼくも書きたくなった。

 

昔から憧れ体質なのである。
誰かがやっているのを見て、それを自分もやってみたくなる。
ぼくが何かを始めるきっかけなんて全部そうだ。

 

おまけにぼくは、刺激を受けると、そのとき見ていたもの「っぽいもの」になってしまう。
いま書いているこれも「そして生活〜」を読んだ直後に書いているので、ナワ的解釈による、星野源的な言い回しが中心になっていると思う。

 

もちろん星野さんだけではない。

 

気分によって読む人は違うので、ぼくの文体はいちいちそれら文学者たちの余りある魅力が乗り移る。
映画館から出たらみんなジョン・ウィックになってしまうように、ぼくもそのときごとの書き手になりきってしまうのだ。

 

多いのは内田樹星野源森見登美彦
森見さんはね。初めて読んじゃうと身体中に「回る」のが早いよね。
内田樹さんは、もう思想から何から影響を受けている。内田モードのぼくは「オーバーアチーブ」とか「制度設計」とかぼやいている。

 

あとはときによって、村田沙耶香さんのエッセイ「大人の思春期病」を読んだり、絲山秋子さんの「ニート」という短編集を読んだり、村上春樹さんの「うずまき猫の見つけ方」を借りてきたり(村上作品は小説は苦手、エッセイはだいすき)、イラストレーターの中村佑介さんの画集を、まえがきから作品、あとがきまで舐め回したり、萩尾望都作品のロマン100%のセリフたちに酔いしれたり。

いろいろである。

で、そのときによってこれら大好きな人たちが、ラーメンズのコント「ネイノーさん」のように憑依する。

だからまあ、ちょっとした幕の内弁当みたいになっているのではないか。

 

おいしいといいんだけど。

 

タイトルは星野さんの曲「夢の外へ」と「エピソード」から。
星野さんもね。「そして〜」は松尾スズキさんの戯曲から、「働く男」はユニコーンの曲からの引用だったし。

 

「引用上等」なこの世界のルールにのっとった次第。

とはいえ引用される方がすごいと思うから、ぼくもぜひ、誰かに引用されたいです。

 

言葉は、とてもいいもんです。